日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎の定義・診断基準」によるとアトピー性皮膚炎は、「増悪・寛解を繰返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
」と定められています。
簡単に言えば「皮膚の乾燥とバリアー機能異常」がある人に、様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じる、痒みを伴って慢性的に起こる皮膚炎(湿疹)という事になるでしょうか。
アトピー性皮膚炎の治療は現在は、病気そのものを完治させる薬は存在しないので、1.皮膚炎の対症療法 2.悪化因子の除去 3.スキンケアの方法をあわせて行うことになります。
よく使用される薬は、ステロイド外用薬・非ステロイド外用薬、保湿剤、タクロリムス外用剤、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、漢方薬等があります。
ステロイド外用剤
ステロイドはもともと体内にある副腎皮質ホルモンと同様の働きをする薬です。
炎症や免疫反応を抑えることが出来る効果があります。
その効果を元に 5 段階に分類されていて、皮膚炎の重症度に応じて薬の強さを調節して使用します。
また、効果の高さと副作用の起こりやすさは一般的に比例しますので、必要以上に強いステロイド外用薬を使わず、「皮疹の重症度」に見合った薬剤を選ぶことが大切です。
全身的な副作用は内服で長期使用した場合のみですが、外用の場合でも長期連用により、皮膚が薄くなる・萎縮する、血管が浮いてくるの等の副作用が出てくることがありますので、注意しながら使 用します。
医師の指示に従って塗ってください。
非ステロイド系消炎剤(外用剤)
炎症を抑える力は極めて弱く、ステロイドに代われるものではありません。
ステロイドの副作用 が出やすい首や顔に使用されることが多い薬です。
ただし、接触皮膚炎(かぶれ)を生じることも しばしばあり注意が必要です。
免疫制御薬(タクロリムス外用剤:プロトピック)
アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として登場した薬剤です。
特に、顔・首の皮疹に対して有効で す。
塗り始めて数日間、ほとんどの方が刺激感を訴えますが、症状が軽快すると共に刺激感も消えていきます。
顔に好んで使用されますが、その他の部位にも使えます。
最近、大人のアトピー性皮 膚炎の患者さんだけでなく、濃度の薄い小児用も発売されて使用されています。
内服薬
アトピー性皮膚炎はとても痒いのが特徴の病気です。
痒みが強いと引っ掻きによる悪化を起こしたりします。
痒みが強くて、いらいらしたり十分に眠れない時には痒みを抑える目的で、抗ヒスタミン作用のある内服薬や抗アレルギー剤はきちんと飲まれると良いでしょう。
またこれらの外用剤や飲み薬の併用として、漢方薬の使用をすることもあります。
アトピー性皮膚炎を上手くコントロールするには、炎症をきちんと抑えた後、悪化因子を出来るだけ除去すること、スキンケアが重要です。
アトピー性皮膚炎の患者さんは多少とも、皮膚のバリアー機能が低下し、乾燥肌で、抗原や微生物が侵入し易い状態です。
これらをコントロールするためにも日常のスキンケアは重要です。
皮膚を清潔に!
皮膚の清潔保持のため入浴、シャワーを励行し、刺激の少ない石鹸で軽く洗います。
強くこすることはせずに、泡で洗うことをお勧めします。
痒みを生じるほどの高温のお風呂は避けましょう。
皮膚の保湿
保湿剤は皮膚の乾燥防止に有効です。
使用感の良いもの・自分に合ったものを選んで1日2回位(入浴後と朝)は塗ります。
軽症の場合、これだけでも改善する場合があります。
悪化因子の除去
通常の治療を行ってもなかなか良くならないアトピー性皮膚炎の治療では、悪化因子を調べて取り除くことも重要です。
アレルギーの原因となるアレルゲンについては年齢により多少違いがあり、乳幼児では食物アレルゲンそれ以降ではダニ、ハウスダストなどが関係していることが多い傾向にあります。
直り難い場合にはこれらの検査も手助けになるかもしれません。
また汗・空気の乾燥・皮膚に直接触れる衣類・石鹸等の科学的な刺激・引っ掻く等の物理的な刺激・精神的ストレスなども悪化因子と言えます。
思春期以降も続く成人型のアトピー性皮膚炎では、環境の変化・家庭や学校、会社などでの人間関係のトラブルなどの心理社会的ストレスが悪化に関係していることことがしばしばあります。
イライラした時や逆にホッとした時についつい引っ掻いてしまい、クセのように掻いていることが治らない大きな要因となっていることがありますので、ストレスの発散方法を身につけることも重要でしょう。